1. U.W.Nとは、

U.W.Nとは、水中で行うオリエンテーリングのことです。
スキューバセットを背負った二人組のダイバーが、ロープについたブイを引いて、水中コンパスを頼りに、
あらかじめ海底に設置された数カ所のチェックポストを如何に正確に回って帰れるかを楽しむスポーツです。
初心者にとっては楽しみながら、潜水の基礎をマスター出来るものであり、叉、ベテランダイバーには、
自己の潜水技術をより向上させるものです。
U.W.Nでポストを正確に回れるようになると、今度は回って帰って来る所要時間が気になってきます。
そして、自分と他のダイバーとを比較する様になり、ここからU.W.N競技が生まれました。
さて、U.W.NとはUNDER-WATER-NAVIGATIONの頭文字をとったもので、さしずめ水中航法、潜水航法等と
訳されます。初期の頃のU.W.Nは、ダイバーが潜水ポストに正確に行くつく為の技術として、何時の間にか始められた
ものです。
水面を泳いで移動し、陸上の目標物により「山たて」して位置を出し、垂直に潜水したその海底に、目的の
岩を発見して、自己の技術に自信を持たれた経験は誰もが持っている事でしょう。
又、陸上遥かの沖合いから潜水したまま、如何に上手に上陸地点近くまで帰れるかを、潜水仲間と競ったり
したものですが、これが現在のU.W.N競技の始まりでした。
ベテランと言われていたダイバーが、自分の感のみに頼った結果、とんでもない方向に行ってしまい
大失敗したり、始めたばかりの初心者ダイバーが、水中コンパス、水深計を上手に使って正確に帰って来て
皆を驚かせたりする事もありました。
昭和44年に伊豆海洋公園で行われた第一回全日本スポーツ選手権大会の一競技種目として、我が国で
UWN競技が初めて正式に生まれました。
ヨーロッパでは、この頃すでにこの競技の世界大会まで開催されていました。日本でも沖縄国際海洋博協会
との共催で行われた「EXPO'75ダイバーズフェスティバル」の正式競技種目として、全世界のダイバー参加
のもとに「国際UWN競技大会」が行われましたが、この数年後で途絶えてしまい現在にいたっています。
U.W.N競技のルールは第一に安全、第二に楽しさを基本に決められていますが、「あらかじめ海底に設置された
チェックポストをバディで、水中コンパス、水中距離計、ダイブコンピューターなどを使って出来るだけ正確に
早くまわってくる」という簡単なものです。初めての人でも潜水が出来る人なら、主催者の説明ですぐに競技に
参加できます。

2. 競技ルールとは

@競技に参加するダイバーは、スキューバ完全装備でバディで出場を申込みます。
A参加者に競技主催者から事前にスタート、チェックポスト、ゴールなどを示す競技用海図が与えられます。
B競技者はブイのついた一本のロープを引きながらチェックポイントを回りますが、この時バディは
 必ずロープを握っていなければなりません。(しかし、体等に縛り付けてはいけません)
Cスタート順はあらかじめ抽選により決められ、各自スタート時間が発表されるので、その時間にスタート
 します。
Dチェックポストを示すブイは、ロープで海底の錘に止められていますが、そこにチェックポストのナンバーを示すプレート(色違いの洗濯バサミ)が
 付けられているので、それを持ち帰ることでポイント通過の証しとします。
E浮上したり、コースを大きくはずれて明らかに元に復帰出来ないと判断され、或いは、危険と思われた場合は、
 その時点で、その組の競技は終了と判断されます。
F他の競技者の妨害をしたり、バディが離ればなれになった場合は、失格となります。
G全部のチェックポストを回りゴールインした場合は、その経過時間により優劣が決められます。

3. U.W.N競技への参加

少し潜水できれば、誰でも参加出来るこの競技のメリット及び楽しみ方等についてもう一歩踏み込んで説明します。

@競技会場が簡単に得られる
 漁業者に迷惑をかけずに海に潜ることは、ダイバーの正当な権利ですが、無害潜水で行うU.W.N競技の場所に
 ついては、どこでも問題は起こりません。
 得に、この競技が必ずしも岩場ではなくても砂場でも十分に楽しめることで、新しい潜水海域が拡がります。

A基本的潜水技術の向上になる。
 U.W.N競技は、通常潜水の基本であるバディシステムで行われます。バディは必ずブイのついた一本のロープを 握って行動しており、
 離れた場合は失格となりますので、もっとも有効な安全潜水の訓練となります。
 水中コンパスを理解し、上手に使いこなすことが、競技成績の優劣につながり、良い勉強となります。
 その他、水深計、残圧計、ダイブコンピューターの見方も、ロープの扱い方も上達しますし、全く良いことづくめです。
Bルールが簡単
 U.W.Nのルールは第一に安全、第二に楽しさを基に決められていますが、「予め海底に設置されたチェックポストをバディ潜水で、
 出来るだけ正確に早くまわってくる」という簡単なものです。ですから、潜水が出来る 者なら、主催者の事前の簡単な説明ですぐに競技に参加できます。

C誰にでも優勝の可能性がある。
 参加者の一人一人に優勝の可能性を持たせるために、性別、年齢別、能力別に、例えば次のようなクラスに分けられて競技は行われます。
   a.ジュニアクラス(16才未満)
   b.女子クラス
   c.一般男子クラス(40才未満、40才以上)
   d.男女混合クラス
   e.エリートクラス

D陸上の見学者も楽しめる
 潜水でのほとんどの競技は、その性質上は陸上からは見ることの出来ない水中で行われるのですが、U.W.N競技で引くロープのブイには、
 見学者からも競技者を容易に識別できるようにブイの色分けとかナンバーなどが書かれているので、ダイバーの移動の様子がはっきりわかり、
 陸上の見学者、応援者はダイバーに声が届かない のを知っていても思わず大声で「右だ!右、左だ!左!」等の声援が飛び出すほどでです。
E時差スタートで参加者各自のペース
 U.W.Nのスタートは、3分間隔以上の時差をもってスタートが行われます。これは他の競技のほとんどが轟砲一発、同時にスタートするのと異なり、
 予め、くじによってスタート順とスタート時刻が与えられますので、自分のペースに合わせて、スタートの準備ができ、エキサイトしないで
 スタートが出来ます。

F競技に使用する器具を自作する楽しみ
 水中コンパス、水深計、水中距離精算計等をセットしたナビゲーションボードは、この競技に必要な器具ですが、
 これらは市販されていません。競技会に持ち込まれるナビゲーションボードのほとんどは、水中コンパスを
 利用した自作の物であり、その良し悪しは、競技の結果に大きく響いています。このために選手は、各自工夫を
 こらした自分に適したボードを自作する時から始まったと考えても良いでしょう。夢を追い、プランを練って
 器具を自作する楽しみは、やったものでないと解らないかも知れません。

G競技会でのダイバー同志の親睦
 各クラブ同志のつながり、ダイバー同志のふれ合いは、何か機会がないと行われないものです。
 このような大会が公に開催されなくなった最近のダイバーは、とかく、一地区のみの交流に留まり、全国各クラブ との情報交換や親睦は
 非常に難しくなってきました。
 これからは、クラブ同志の対抗競技会や競技大会が、度々開かれるようになりますので、ダイバー同志の親睦の手助けにもなることでしょう。
 競技大会に参加した知らぬ者同志が同じダイバーであり、同じU.W.Nを通じて知り合い、競技の間の食事に、又、
 競技会前日のルール説明会や終了後の海浜パーティーで、親睦の輪を広げてゆくのは意義のあるものです。

HU.W.N競技には、もう一つの大きな楽しみがあります。
 それは、競技会をシリーズ化して出場する度にコンペカードに印をもらい、それが目的の枠を埋めつくした時の
 表彰です。小さな子供が夏休みのラジオ体操に参加し、カード印をもらい、それが増えて行く楽しみと同じです。